おいしそうに見えても油断は禁物

秋になるとオレンジ色のおいしそうな柿が木いっぱいに実ります。
そのなかでも、木から採ってすぐに食べられるのが甘柿。渋くて舌が痺れちゃうのが渋柿です。
同じオレンジ色に熟していて、見た目はそっくりなのに、見分けるのは難しくて、食べてみないとわからない。

渋柿はなぜ渋いのでしょうか?
渋柿と甘柿を分けるのは、それぞれに含まれるタンニンという成分が、水に溶ける水溶性か、水にとけない不溶性かの違いによるものです。

渋柿に含まれる水溶性タンニンは口の中に入れた瞬間、唾液によって溶け出し、渋味成分が口中に広がります。
いっぽう甘柿は熟すことで、タンニンが水溶性から不溶性へと変わっているため、口の中に入れてもタンニンが溶け出さず、渋味を感じることがないのです。
水溶性タンニンと不溶性タンニン

もともとどんな柿でも、実が小さいときは渋い

柿に限ったことではないですが、未熟な果実は種を守るために渋味成分をまとっています。
種が成熟すると、ホルモンの作用で渋が不溶性に変化し、渋が抜けます。甘くなることで鳥などに捕食させ、遠くに運んでもらい子孫を増やすのです。
1000品種以上ある柿の中でも、甘柿は鎌倉時代に神奈川県で発見された「禅寺丸柿(※)」が始まりで、20品種ほどしかないと言われています。
甘柿・渋柿以外にも、種の入り方次第で次の4種類に分類されます。

  • 【完全甘柿】 種の有無にかかわらず甘くなる
  • 【不完全甘柿】種が多数入ると甘くなる(→種がないと渋柿)
  • 【完全渋柿】 種の有無にかかわらず渋いまま
  • 【不完全渋柿】種が入ると種の周辺だけ渋みが抜ける

(※)禅寺丸柿は不完全甘柿なので、なった実の全てが甘かったというわけではないんですね。

渋柿といえども、完全に熟れれば渋が抜ける

渋柿をブヨブヨに熟すまで放っておくと最終的には甘くなります。
柿としての食感の好みは別れますが、ずくし(地方によって呼び方は色々)といって、ドロドロのゼリーのような状態になり、食べるととても甘くて美味しいんですよ。

まとめると、「甘柿と渋柿の違い」とは、『含まれるタンニンという成分が、水に溶ける水溶性か、水にとけない不溶性かの違い』によるもの。品種によって「甘柿」か「渋柿」かに分けられるが、なかには「種が多いか少ないか」などでどちらにも成りうる特殊な品種もある。